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実際、看護専門学校と看護短大・大学はどう違うかと聞かれると、その内容以上に、問題になるのは、前記のような、不可解な〃差別″ばかり。
この十年のあいだに、看護大学や看護短大は飛躍的に増えましたが、それに伴い、こうした矛盾も拡大している気がします。
大・看護大学には作られています。
そのほとんどは、看護系の専門学校が厚生省管轄、短大・大学が文部省管轄というお役所の縦割りが作る差であり、多くの専門学校生にとっては、不利益なものであると言っていいでしょう。
たとえば、同じ三年間勉強しても、看護専門学校だと大学に編入できず、短大だと編入できる。
実際、今後作られていく専門看護婦など看護婦がキャリアアップしていくための資格は、大学院を出ることが前提になっているものもあります。
こうなると、専門学校卒の看護婦と看護大学を出た看護婦とで、先行きに差がつくことが容易に予想され、専門学校卒の看護婦のなかには、不安を訴える人も少なくありません。
そのうえ、世に珍しくもない大卒も、看護の世界では珍しいだけ、今は妙にお互い意識しちゃうようで……。
これも、もう少し年月がたてば落ち着くのでしょうが、なーんか、淋しい気持ちで、私はそんな現実を見ています。
看護大学・看護短大が増えたといっても、私が看護学校に入った一九八四年と比較して、大学は十校←四十校、短大は三十八校←六十六校。
相変わらず、圧倒的多数は看護専門学ですから。
看護専門学校卒の人たちが、淋しい目に遭わないような仕組みを作ってほしですから、こうした状況の下で、「看護専門学校と大学と、どっちがいいのでしょうか」などと相談されると、こちらとしてはとても答えに窮します。
実力本位の資格職としてこの仕事を選んだ身としては、〃そりゃあ専門学校より、大学のほうが通りがいい〃と無邪気に言いたくないし、今の状況自体が間違っているとしか思えないのですから…。
なんとも気持ちは複雑です。
私が看護学校に入学したころは、まだ看護大学や短大は数えるほど。
看護学校といえば看護専門学校、という時代だったから、悩まずにスッとそっちに行っちゃった。
思えば、悩まずにすんだだけ、楽だったのかもしれません。
もっとも私の場合、高校で文系のコースを取っていたので、理系科目が多い大学・短大は、はなから蚊帳の外。
数学と理科一科目の受験でさえ大騒ぎでしたから、専門学校でもよく入れたという感じだったんですよ。
ですから、今受験したとしても、結局専門学校だったろうな、とは思っていますけどね。
それでは、看護専門学校と看護短大・看護大学の内容的な違いはどんなものか、考えてみましょう。
一般的に今の看護界では、両者の違いについて、こんなことが言われています。
「看護学を教えるのが短大・大学、看護婦の職業訓練を行なうのが看護専門学校」「大学は勉強の仕方を教えるところだから、看護大学を出た看護婦は、あとで伸びる。
看護専門学校卒の看護婦は、即戦力にはなるが、あとから伸びない」内容は違っても、ここに流れているのは、看護専門学校=経験重視、看護短大・大学=理論重視という図式。
でも、これは大学関係者の言葉だけに、専門学校へのかなりの偏見が含まれていると言わなければなりません。
たしかに看護専門学校は実習が多く、三年間のうちの半分は、実習だった気がします。
看護学校時代、私はそのカリキュラムの過密さに、泣かされつづけていました。
今は、看護専門学校もだいぶゆとりが重んじられるようになり、土曜は休みだし、多少実習も減ったよう。
それでも、短大・大学に比べれば、看護専門学校のほうが、実習中心ということは今も言えるでしょう。
だからといって私は、実習で実技ばかりをやらされていたわけではありません。
むしろ実習中は、あとから実習を振り返って書く記録の負担のほうが、はるかに大きかった。
あの過程で私たちは、実践での考え方、学び方を学んだのだと思います。
実習が多いこと=技術重視、座学が多いこと=理論重視というのは、あまりに表面的な見方です。
看護は実践の科学、とはよく言われることなのですが、やはり身体を動かして学ぶことは、捨てたもんじゃない。
こう言うと、やれ経験主義的だ、科学的でないと言われてしまうのが、なーんか妙。
くつに身体だけ動かしていればいい、と言っているわけでなし。
理論だけじゃなく経験も必要だ、と言いたいだけなのに。
私から見ると、看護専門学校も、短大・大学も、実習の多い少ない以外、教育の質的にはそれほど決定的な違いはないように見えます。
看護専門学校は、言われているほど技術偏重じゃないし、大学だって、それほど極端に理論偏重ではありません。
いつだって現実は、外から言われているほど極端ではないものです。
少なくとも、今の段階で短大・大学のほうが、すべての専門学校より質的にすぐれた教育をしている、と言いきる根拠を、私は手もとに持ちません。
ただし、これはあくまで質的な面であって、量的な面については、短大・大学と、専門学校では、大きな違いが出てきます。
設置基準がしっかりしており、公的な補助金が受け取れる分、設備、教員の数などでは、専門学校は短大・大学にかないません。
私が出た看護学校は、学生が一学年四十名に、専任教員は全体で六名。
まさに教員が持ち出しで、身を削って教育してくださった、という感じです。
ぶちまけた話、看護学校では教員が足りない分、教員の質による当たり外れが出やすいと言えます。
専門学校に進む場合は、学校ごとの差が大きいことを頭に入れて、情報を足で稼ぐ必要があります。
短大・大学のほうが良くも悪くも標準化される分、当たり外れは少なくなるはず。
設備・教員の量的な充実が望めることを考えると、今後めざす方向性としては、やはり短大・大学だろうということは、私も認めるところです。
〃量じゃない、質だ″といくら言ったところで、質が同じなら、量の多いほうにはかないませんから。
ただ、この世にはその一方で、〃量の増加は質の低下につながる〃という真理があることも事実。
そうした状況にならないよう、短大・大学と専門学校が、お互いにいいところを取り込むべく、もっと情報交換すればいいのに、と思うんですけどね。
いろいろごちゃごちゃとお話して、かえって頭が混乱してしまった方もおられるでしょう。
しかし、今、看護教育がそのコースの多さから、かなりの混乱をきたしているのは事実であって、そのことをまるで知らずに手近な情報だけで進路を選んでは、きっとあとで後悔することになるでしょう。
どのコースを選ぶかは、こうした情報から、あなた自身が納得のいく道を選んでもらいたいと思います。
ただし、そうは言っても、一番望んだコースに進めるかどうかは、実力と運もかかわることですから。
いわゆる偏差値で見れば、看護大学、看護短大、レギュラーコースの看護専門学校、准看学校の順になっていることは厳然たる事実であり、そのなかで自分がかろうじてひっかかったところに入る、というのが現実だろうと思います。
そして、なおかつ、そのどこに行くかで選べない道もできてしまうとなれば、やはり自分の落ち着いた場所で、それなりの意義を見つけ、かつキャリアアップをめざすのは自然なこと。
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